飲酒量を記録すると、お酒は減る?「見える化」する意味を考えてみた
「最近、ちょっと多いかな」
そう思うことはあっても、
「今日から禁酒しよう」
「今週から量を減らそう」
と決めて、そのとおりに続けるのはなかなか難しいものです。
私がLifeXpを作り始めたときも、出発点は「お酒を減らそう」ではありませんでした。
「自分は実際、どれくらい飲んでいるんだろう?」
という疑問です。
今日飲んだ量は覚えています。昨日もだいたい覚えています。
でも、
「この1週間でどれくらい飲んだ?」
と聞かれると、意外と分かりません。
そこで、飲んだお酒を記録するようになりました。
では、こうして飲んだお酒を記録すると、飲む量そのものは変わるのでしょうか。気になって調べてみたところ、手がかりになりそうな日本の研究がありました。
「記録すること」に意味はある?
Section titled “「記録すること」に意味はある?”筑波大学の研究グループが2023年に医学誌『BMC Medicine』で発表した、ノンアルコール飲料と飲酒量についてのランダム化比較試験です。
研究の概要は次のとおりです。
- 対象:20歳以上で、週4日以上飲酒し、飲む日の純アルコール量が男性40g以上・女性20g以上の人。アルコール依存症の人や、肝臓の病気の既往がある人などは除外
- 人数:123人(22〜72歳、平均47.5歳、女性が約56%)
- 方法:くじ引きのような方法(ランダム化)で2つのグループに分ける
- ノンアル提供群(54人):12週間、4週間ごとに計3回、好きなノンアルコール飲料(350mL×24本入りのケースを1回最大3ケース)を無料で自宅に届ける
- 対照群(69人):ノンアルコール飲料の提供なし(研究終了後に提供)
- 記録:両方のグループとも、飲んだお酒とノンアルコール飲料を毎日「飲酒日記」に記録し、4週間ごとに提出
- 期間:提供期間12週間+その後8週間の追跡(計20週間)
この研究で確かめようとしたのは、「ノンアルコール飲料を提供すると、お酒の量が減るか」です。
飲酒日記は、飲んだ量を測るための方法として、両方のグループが同じようにつけています。「記録する人」と「記録しない人」を比べた研究ではない、という点は覚えておいてください。
ノンアル提供群では、対照群より飲酒量が多く減った
Section titled “ノンアル提供群では、対照群より飲酒量が多く減った”研究で主に見たのは、12週目の時点の「直近4週間の純アルコール摂取量」が、開始前と比べてどれだけ変わったかです。
| 直近4週間の純アルコール量の変化(平均) | |
|---|---|
| ノンアル提供群 | 約321g減少(−320.8g) |
| 対照群 | 約77g減少(−76.9g) |
2つのグループの差は、統計的にも意味のある差とされています。
1日あたりに直すと、ノンアル提供群は平均で約11.5g、対照群は約2.7gの減少です。ビール(5%)500mLの純アルコール量が約20gなので、ノンアル提供群では、1日あたりその半分強が減った計算になります。
さらに、ノンアルコール飲料の提供が終わってから8週間後(20週目)の時点でも、ノンアル提供群は約277g減、対照群は約126g減と、グループの差が続いていたと報告されています。
また、ノンアル提供群では「ノンアルコール飲料を飲む量が増えた人ほど、お酒の量が減っていた」という関係も見られました。論文では、お酒の一部がノンアルコール飲料に置き換わったことが、減少の理由の一つではないかと考察されています。
なお、研究期間中に副作用などの有害事象の報告はなかったとされています。
「じゃあ、記録するだけでも減ったの?」
Section titled “「じゃあ、記録するだけでも減ったの?」”この研究で、私がいちばん気になったのはここです。
ノンアルコール飲料をもらっていない対照群でも、12週目の時点で平均約77g(1日あたり約2.7g)減っています。
対照群がしていたことといえば、毎日飲酒日記をつけていたこと。
「じゃあ、記録するだけでもお酒は減るんじゃないか」
と考えたくなります。実際、論文の著者たちも、対照群の減少は飲酒日記をつけることが影響した可能性があると書いています。
でも、この研究から「記録したから減った」と言い切ることはできません。
理由は、比べる相手がいないからです。
この研究には「飲酒日記をつけなかったグループ」がありません。全員が記録しています。そのため、対照群の減少が記録によるものなのか、それ以外の理由によるものなのかを区別できません。
たとえば、一般的にはこんな可能性も考えられます。
- 研究に参加して、自分の飲み方が見られていると意識したこと(論文でもこの可能性に触れたうえで、影響した可能性は低いと考察しています)
- 研究期間(2022年5月〜2023年1月)の季節や生活の変化
- もともと自分の飲酒量が気になっていた人が、研究に参加しやすかった可能性
また、飲酒量は参加者自身の記録(自己申告)にもとづいていること、参加者は自分がどちらのグループかを知っていたことも、論文の中で研究の限界として挙げられています。
論文が引用している別の研究のまとめでも、物質使用(アルコールなど)について自分で記録する方法を調べた研究のうち、効果があったとされたのは約3割で、残りは効果がなかった、あるいは逆効果だったとされています。
「記録すれば必ずお酒が減る」とは言えない、ということです。
それでも、記録すると「分かる」ことがある
Section titled “それでも、記録すると「分かる」ことがある”じゃあ、記録することに意味はないのか。
私はそうは思っていません。
記録して飲酒量が減るかどうかは分からなくても、少なくとも
「自分がどれくらい飲んだか」は分かる
からです。
「そんなに飲んでない」
という感覚は、けっこう当てになりません。
ビール、ワイン、日本酒と種類が違っても、純アルコール量に換算すれば同じ単位で足し合わせることができます(計算方法は純アルコール量とは?で紹介しています)。
1週間分を足してみると、
「思っていたより多かった」
「意外と飲んでいない日もあった」
など、感覚と数字がずれていることに気付くことがあります。実際に1週間分を計算してみた例は、1週間でどれくらい飲んでる?純アルコール量で飲酒量を計算してみるで書きました。
厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」でも、健康に配慮した飲酒の仕方の一つとして「自らの飲酒状況等を把握する」ことが挙げられています。また、純アルコール量を認識して自分のアルコール摂取量を把握することは、自分の健康管理にも活用できるとされています。
減らすかどうかを考えるのは、その次です。
LifeXpの場合
Section titled “LifeXpの場合”LifeXpでは、飲んだお酒を記録すると、
- 純アルコール量に換算して記録する
- 休肝日をカレンダーで確認する
- 選んだ期間の飲酒状況(休肝日や、飲んだ量ごとの日数)をまとめて見る
- 「飲酒ダメージスコア」の推移を見る
といった形で、最近の飲み方を振り返ることができます。
飲酒ダメージスコアとは、最近の飲酒量や休肝日などから、飲酒の積み重なりとその変化をLifeXp独自の方法で見える化した指標です。医学的な測定値や診断値ではありません。
飲酒量に応じて上がり、時間の経過とともに下がっていきます。体や肝臓の状態、血中アルコール濃度が分かるものではなく、運転してよいかどうかなどの判断にも使えません。
私自身、毎日LifeXpに記録していて、
「ここんとこ、ちょっと多いかな」
「今日は飲まないでいいか」
「もう一日休んでみようかな」
と思うことがあります。
ただ、これはあくまで私個人の体験です。先ほどの研究のとおり、記録することで飲酒量が減るとは言い切れませんし、LifeXpを使えばお酒の量が減る、というものでもありません。
LifeXpが見せるのは、記録した事実と、その積み重なりです。今日飲むか、少し控えるか、休むかを決めるのは、使う人自身です。
ノンアルに置き換えるという選択肢
Section titled “ノンアルに置き換えるという選択肢”この研究からもう一つ考えたいのは、お酒との付き合い方は「飲む」か「我慢する」かの二択だけではないかもしれない、ということです。
この研究で、参加者はお酒を飲むことを制限されていたわけではありません。ノンアル提供群には、代わりになる飲み物が自宅に届けられていました。それでもお酒の量が減り、論文ではその理由の一つとして、いつものお酒の一部がノンアルコール飲料に置き換わった可能性が考察されています。
厚生労働省のガイドラインでも、健康に配慮した飲酒の仕方の例として、飲酒の合間に水(または炭酸水)を飲むことや、アルコールの入っていない飲み物を選ぶことが挙げられています。
たとえば、
- いつもの2本目だけノンアルにする
- 平日の1日はノンアルで晩酌気分だけ楽しむ
- 飲み会では途中で1杯ノンアルを挟む
といったやり方もあります。
もちろん、ノンアルを選ぶかどうかも自分次第です。「今日はちゃんとお酒を楽しみたい」という日があっていいと思います。
なお、この研究では、ノンアルコール飲料は無料で自宅に届けられていました。自分で買う場合に同じ結果になるかは分からない、と論文でも述べられています。
まずは1週間、記録してみる
Section titled “まずは1週間、記録してみる”いきなり禁酒するのは大変です。
だから、まずは1週間だけ、
- 何日飲んだか
- 純アルコール量は合計で何gだったか
- 休肝日は何日あったか
を見てみるところから始めてみるのはどうでしょう。
休肝日の日数と飲んだ量の関係については、休肝日は週何日がいい?「週2日」だけでは分からない飲酒量の考え方でも書いています。
記録したからといって、お酒が減るとは限りません。
でも、「なんとなく」が数字になると、今日どうするかを自分で考える材料にはなります。
お酒をやめるためではありません。
いつまでも美味しく食べて、楽しく飲めるように。
そのために、まず自分がどれくらい飲んでいるのかを知る。LifeXpが大切にしていることも、そこにあります。
ぜひ、ベータ版を試してみてください。
本記事で紹介した研究は、アサヒビール株式会社との共同研究として実施され、同社から研究資金が提供されています。論文では、研究代表者が同社から研究資金を受けていることが開示されており、研究の計画・実施・解析・執筆は研究者が企業から独立して行ったと記載されています。
本記事は公的機関の公開情報や学術論文をもとに整理したものであり、医療上の診断・治療・個別の健康相談を目的としたものではありません。健康上の不安がある場合は医療機関等の専門家にご相談ください。飲酒で生活に支障が出ている方や、お酒をやめたいと考えている方は、医療機関や専門の相談窓口にご相談ください。詳しくは運営者情報・情報ポリシーをご覧ください。